ワンちゃんネコちゃんと音の話

“掃除機を使いはじめると怯える”、“お客さんが来ると隠れてしまう”。
そんな動物達の気持ちや理由について、林屋動物診療室の中角先生に伺いました。
意外と多い、
“音”に関する悩み
雷が鳴ると吠えてしまうとか、掃除機と喧嘩を始めてしまうとか、ある特定の音に過敏に反応してしまうという相談は、結構多くあります。これは個人的な考えですが、犬に関して言えば、音の“大きさ”が問題なのではなく、音の”種類”によるものが大きい印象があります。動物病院で診察をしていても、どんなに他のワンちゃんが大きな声で鳴いていても落ち着いているのに、掃除機を使い始めた途端に飛び上がって逃げるとか、そんなことがよくあります。多分、その子にとって“不快な音”があるのだと思います。
犬も猫も、鼻だけではなく
耳もいい
例えば犬は人よりも高い音を聞くことが出来ます。また犬や猫は、私たち人間よりも自由に自分の耳を、音の鳴る方向に向けて動かすことが出来ます。私たちが聞き取れない音も聞き取ることが出来ますから、飼い主さんが気にならない音でも、ワンちゃんやネコちゃん達には一大事であることがあるのです。
気づきにくい、
ネコちゃんの音ストレス
音の悩みは、ワンちゃんの飼い主さんからよく聞きます。ではネコちゃんにはないかと言うとそうではなく、むしろネコちゃんの方が音に敏感な気がします。
“お客さんの足音が聞こえただけで、うちの子が姿を隠して出てこない”といった経験はないでしょうか?ワンちゃんだと嫌な音がするとひたすら大騒ぎをする子が多いのですが、ネコちゃんはスーッと音もなく隠れてしまうだけなので、ネコちゃんのストレスに飼い主さんが気づきにくいのだと思います。その分、より飼い主さんが音に対して気を遣ってあげることが大切かもしれません。
大切なのは生活指導
飼い主さんから相談を受けたら、まずは原因となる音を無くすことが可能かどうか、生活指導を行います。音を小さくしたら上手くいくか、というとなかなか難しい。人間にとっては小さくて聞こえにくい音でも、ワンちゃんやネコちゃんには聞えてしまうのです。
音をなくすことが難しいのであれば、動物行動学的な視点に立って、その音に馴れさせることを試みます。
家の前を車が通るたびに鳴くワンちゃんのケースでは、大好きなお父さんが車で帰ってくる時間がだいたい夕方の6時から7時くらいでした。その時間になるとワンちゃんがソワソワし始める。お父さんが帰ってくるという喜びと車の音が、いつしか条件付けではないですけど、紐づけられてしまい、車の音に敏感になってしまっていました。こういったケースの場合では、この時間帯にご飯をあげて気持ちを紛らわせてあげたりして、“静かに待っていたら、お父さんが帰ってくる”という風に、新しく行動と気持ちを紐づけしてあげることが大切です。
もし音に関することでお悩みの飼い主さんがいらっしゃいましたら、その前後の行動や出来事を思い出したり、スマホで動画に記録にしたりして、獣医さんに相談してみてください。ワンちゃんやネコちゃんの気持ちを、早く理解してあげられるかもしれません。

中角 航
林屋動物診療室 総合医療センター 副センター長
獣医師・博士(獣医学)
山口大学大学院出身。趣味はフットサルと写真撮影。
林屋動物診療室について
1972年、京都府宇治市に開院。
「正確な診断、適切な治療、分かりやすい説明」をモットーに、病気の治療のみならず、今現在お困りのことを解決し、健康管理や予防などに共に取り組み、ご家族それぞれに寄り添った形の獣医療を提供。どうぶつ腫瘍センターなど専門医療から、ペットヘルスケアクリニックなど日常の病気の予防や健診まで、動物の健康を通じて人と地域の幸せに貢献することを目指している。
※2024年3月取材当時の情報です。